「RIKALI MI LENI」Zdenka Bezdekova 出久根育

出久根育さんのチェコ絵本、最後にご紹介するのは「RIKALI MI LENI」です。

こちらは昔、エヴァ・ベドナージョヴァーの挿絵でも出版されていたズデニュカ・ベズヂェコバーによるお話で、邦題「レニとよばれたわたし」となります。

第二次世界大戦中、ドイツのある家庭で、レニという名でドイツ人として教育を受けて育った少女。家族との日常や学校での出来事、チェコ語の書かれた缶にはいったお菓子や、チェコ語のプレートのついた昔のトランクやお人形などを見つけたりするうちに、自分がこのドイツ人家庭の本当の子どもではないことに気付きます。本当のお母さんの元に戻るまで、勇敢に現実と向き合って頑張った、小さな女の子のお話です。

1939年のミュンヘン協定でチェコのドイツ国境地方のドイツ合併が成立し、ドイツ支配下になったチェコのたくさんの子供達が誘拐され、ドイツ人としての教育を受けたりしました。ドイツ軍が戦力を増やすため、また、アーリア至上主義にのっとった政策として、実際にあった出来事をもとに書かれた物語です。

作家であり、教師でもあったベズヂェコバーは、戦争が終わってから取材のもとこの物語を書き上げました。ナチス・ドイツによって被害を受けたり、その過酷な状況とたたかった子どもたちのお話はいくつも日本語に訳されています。しかし、チェコで子ども向けにこうした物語を書いたものは少ないのだそう。

こうした作品に、日本人である出久根さんが絵を描かれるというのは、大変珍しいことかと思います。しかし、以前チェコの民話集「命の水」の挿絵を担当された時、ちひろ美術館で学芸員の方に、チェコ以外の作家が選ばれたのは異例でとても名誉あること、とお話を伺ったことがあります。

チェコの歴史を現代の子どもたちへ伝えるこの作品に出久根さんの絵が使われているのも、あちらで出久根さんの作品がたくさんの方に愛されていることを示しているのではないでしょうか。

児童文学作品のため、他の作品に比べ挿絵は少なくなりますが、ページ一面のカラー、タッチの違う白黒のカットともに、出久根さんの絵でチェコの歴史物語を味わっていただける貴重な一冊です。

オンラインストアの方には、エヴァ・ベドナージョヴァー挿絵による日本語版もupしておりますので、お話もしっかり知りたい方はこちらをあわせて読むのもおススメです。二人の作家の絵を見比べてみるのも面白いですね。

今回ご紹介しました出久根さんの著作は、すべて出久根さんよりチェコから直接送っていただいたイラスト・サイン入りの新刊書籍になります。どれも素晴らしい作品ですので、是非お手に取ってみてください。


当店の出久根育さんの絵本はこちらです。

エヴァ・べドナージョヴァーの本はこちらです。

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