本日ご紹介する出久根さんの本は、マルチン・ヴォペンカ作「O duše a dívce」
日本語に直すと「魂と少女について」というタイトルになります。
タイトルの響きからも感じ取れるものがあるかと思いますが、自然界の摂理や自然の姿を通して、さまざまな人生観を考えさせられる、哲学的な14の物語の短編集です。
個人的には、出久根さんの描く自然と動物の描写にどこか神秘的な力を感じ、特に惹かれるのですが、この本ではそんな出久根さんの絵の魅力がお話と見事に響き合っているように思います。
静謐で美しいページいっぱいのカラーイラストと、文章ページに散りばめられた白黒のカット、どちらからも出久根さんの丁寧で繊細な筆づかいが感じられ、物語への想像力を喚起させられます。
全141ページの中にふんだんに挿絵が使われておりますので、両方のテイストをたっぷり楽しんでいただけるかと思います。
また、こちらは全14篇のうち、5篇分のあらすじを出久根さんよりいただいておりますので、お求めくださっだ方にはそちらも同封させていただきます。全部を読むことはできませんが、この5篇で本全体のコンセプトや空気を十分に感じていただけると思います。
こちらでは、その中のひとつ、「Klíčení (発芽)」のあらすじを少しご紹介します。
このお話は、大昔から風の山に言い伝えられてきたものだ。
太陽が容赦無く焼き付け、風が吹き付け、荒廃した土地だった頃の話。
岩がちな渓谷には年に数回だけ水が流れた。干上がった川底沿いには、尖った低木しか生えていなかった。動物たちはそれぞれ獲物を追った。夜間はだいたい晴れていて、星空が広がり、動物たちは誰も活動しなかった。
ある日、空に火の印が現れ、大きな白い鳥が飛んできた。「私はこの地を祝福するためにきた。この川底に水が満たされる時がもうすぐ来る。そして木々が茂るだろう。」と白い鳥は言った。動物たちが「何故お前にそんなことがわかるのだ。」と言うと、白い鳥は「私は未来を告知しているのだ。」と返した。動物たちは牙をむきだし、詐欺師めと罵倒し、白い鳥を攻撃した。そして地面には赤い血が流れた。
時が経っても小川の水は干上がったまま、やはり白い鳥は詐欺師だったと動物たちは言った。ところがしばらくすると、白い鳥が流した血の跡のあちこちから、花の芽が発芽し…
この続き、また他の4篇は、是非出久根さんの絵と一緒にお楽しみください。
こちらも出久根さんのイラスト・サイン入っております。とてもおすすめの一冊です。
当店の出久根育さんの本はこちらです。
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