フランスの絵本作家の中でも有名な作家の一人、「l’Oncle HANSI」アンシおじさんとして知られるこの作家は、今では彼の愛する土地、アルザスの風土や伝統的な衣装を可愛らしいイラストで描く絵本作家として、広く認知されているでしょうか。
ある固有の土地の風土や文化を描くと言う行為は、多くはナショナリズムの変奏であるとも読み取れることが出来ますが、この作家も実は、そのような傾向を多分に持つ作家でした。
この絵本「LE PARADIS TRICOLORE」は1918年のクリスマス、第一次世界大戦終結直後の出版で、その内容も、ドイツに占領されていたこの地方の村々を、フランス軍が次々に解放(それを新たな「占領」という見方も勿論あります)していく様子を描いたものです。
親フランス派であったアンシはその光景を、村々にフランスのトリコロールの旗が掲げられていく様子を実際に従軍し描き留め、それを絵本にしたのです。
悪者にされるドイツ軍、正義の味方のフランス軍。
それから100年も後の時代を生きるわたしたちは、それらの事をそれがある一方の側から見たものに過ぎないとして、幾らかはフラットな視点で見ることが出来るので、アンシの絵をある意味では今では純粋に見ることが出来ているのかも知れません。
描かれた絵の中にも、それを彩る装飾にも、そこにはトリコロールカラーが溢れているのですが、それを政治的な要素を抜きして、ただ単純に美しい絵として見ることが出来ている気がします。
そうして見てみると(多くの日本人は自然と「そうして見ている」と思いますが)、ほんとうに、アンシの描く絵は、可愛らしく、喜びに溢れています。
人々の喜ぶ様子が描かれていて、でも彼らが何故、どんな理由で喜んでいるのかわからなくても、それを見る人は、喜ぶ人を見れば何処か嬉しいものです。
そしてやはり、アンシと言えば、そこに描かれる子どもたち、アルザスの伝統的な衣装を着た子どもたちの可愛いらしいこと!この子どもたちを見るだけで幸せな気分になれますね。
こんな人形があったら欲しいなあ、なんて思ってしまいます。
先日、当店に入荷したこの絵本は古い刷のものではなく1993年のものですが、布張りの装丁がとっても可愛らしいです。この年代のもので布張りの絵本って珍しいですね。飾って置いておくのも良いな、と思わせる美しい絵本です。
ぜひオンラインストアの方でもご覧ください。
当店のHANSIの絵本はこちらです。
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