「THE Z WAS ZAPPED」CHRIS VAN ALLSBURG

日本では村上春樹さんの翻訳で多くの作品が出版されているのでそのイメージで覚えている方も多いのではないでしょうか。こちらはクリス・ヴァン・オールズバーグの「THE Z WAS ZAPPED」です。この絵本はまだ翻訳されていないかと思います。

「ハリス・バーディック」などでも見られますが、オールズバーグ作品の特徴のひとつとして、その本を書いている者(語っている者)に仕掛けを施すということがあるかと思います。

読んだことがある方にはすぐにわかると思うのですが、読んだことがない方にはちょっとわかりにくいでしょうか。

この作品では、始めの扉ページに

THE ALPHABET THEATRE

(アルファベット劇場)

THE Z WAS ZAPPED

(やられたZ)

A PLAY IN TWENTY-SIX ACTS

(26幕のお芝居)

PERFORMED BY

THE CASLON PLAYERS

(演じるのはキャスロンの俳優たち)

WRITTEN AND DIRECTED BY

MR. CHRIS VAN ALLSBURG

(お話と演出はクリス・ヴァン・オールズバーグ氏)

と仰々しく書かれているのですね。CASLONと言うのはアルファベット書体の名前で、この書体の文字たちがこの絵本には登場してくるのです。

こんな風にオールズバーグは自身の影を本の中で少し弱める(寧ろ小さく限られていることを強調する)ことによって、本自体の力(本自身が語り出す力)を強調する効果を作り出しています。

それはオールズバーグのとても喚起的な絵とも呼応して、作品のミステリアスな雰囲気を強めています。

この絵本は御覧の通りアルファベットブックなのですが、数多あるアルファベットブックの中でもこんなにも変なアルファベットブックは他にないかもしれません。Nは釘打ち(Nailed)にされ、Hは隠され(Hidden)、Eは蒸発して(Evaporating)しまいます。

オールズバーグ流のユーモアと、そのユーモアと渾然一体となったオールズバーグの企みによって、子どもから大人までが楽しめる絵本となっています。


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