アイリーン・ハースの絵本の中に漂っている夏の気配。
夏の、夜の気配。
太陽が身体をいじめるかのように照りつける夏の昼の時間ではなく、心地よい風が吹き、草の匂い、時には雨の匂いのような湿った匂いが立ち込める、夏の夜の時間が、この絵本「カーリーおばさんのふしぎなにわ」の中に流れています。
日が暮れるのが遅いので、時計の時間は短いのですけれど、夏の夜は、きっとどの子どもにとっても他のどの季節よりも長いのではないでしょうか。
「まなつのゆうがたは、やわらかなひかり、あたたかいかぜ」
こんな書き出しから始まるこの短いお話は、子どもたちが恐れる、隣に住んでいるカーリーおばさんの、庭への冒険へと続いていきます。
高い塀の向こうのカーリーおばさんの庭は、子どもたちにとっての夏の夜です。魅力的で、でも少し怖くて、けれど何か楽しいことが起こりそうな予感にあふれています。
夏休みにはいつもより遅くまで起きていても怒られませんでした。それに夏の夜には外へ出る機会も多くて、だから思い返してみると自分にも、こんな風に夜を感じるときがあった気がします。
カーリーおばさんの庭には、見たこともない花や植物がいっぱいです。怖かったカーリーおばさんは、話してみると、そんなに怖くありませんでした。別れ際にはお菓子もくれます。
子どもたちは冒険を終えて、まだ、夏の夜の中にいます。夜の中で、不思議な庭のことを思い出しています。そしてそのまま夢見るかのように、お話は夜のままで終わるのです。
今日も暑い一日でした。
けれどもう日が沈んで、ようやく少しは過ごしやすい夜の時間になってきたようです。夏はなんだか星が近い気がするのは気のせいでしょうか。
火星が接近しているのは、気のせいではなく、実際のところのようですね。
ハースの絵本も、その夢の中を思わせる雰囲気のせいなのか、どこかいつも、星が近い気がします。
庭の塀を越えたボールが高く、それはまるで星のように夜空に浮かび上がっていきます。
皆様もどうか、素敵な夏の夜をお過ごし下さい。
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