本日も、昨日upしました「こどものとも」からこちらの本をご紹介させていただきます。
長新太さんが絵を手掛ける二冊「三びきのライオンのこ」と「いそっぷのおはなし」です。 「三びきのライオンのこ」は、おはなしを今江祥智さんが書いています。もうこの豪華な組み合わせを聞いただけで嬉しくなってしまいますが、お二人にとっての最初期と言えるものですので、そういった意味でも貴重な作品と言えるのではないでしょうか。今江さんは22歳で中学の英語教師になり、赴任先で図書館係になったことでケストナーやファージョンと出会い、その後、福音館書店を立ち上げて間もない松居直さんに勧められ、児童文学を書くようになったそうです。1958年に「母の友」で発表されたこの「三びきのライオンのこ」は、間もなく1961年に長新太さんの絵で「こどものとも」から絵本として出版されました。
よく笑うころん、ちっとも笑わないむぅ、ちょっとばかり元気がないしょぼんの三びきのライオンのこが、お母さんに狩りを教えてもらうけれど、それぞれの性格から狩りをすることはできず、お母さんを困らせる、というおはなしなのですが、長さんのやわらかいパステルカラーの色彩の絵と合わさってほのぼのしたあたたかい絵本になっています。面白いのは、各見開きページごとに、文章とメインのイラストの隙間に長さんによる小さなカットが描かれているんです。そのタッチを見ると、それまでは漫画を描いていた長さんの経歴が窺え、そこだけ見てもひとつの作品として楽しめます。
ちなみに、長さんの絵本作家デビューは、「こどものとも」から1958年に発行された
「がんばれさるのさらんくん」です。本当に、お二人は同時期に絵本の世界へと足を踏み入れたのですね。
そして、その長さんのデビュー絵本の作者である中川正文さんが訳を手掛けているのが「いそっぷのおはなし」です。こちらは1963年に発行。長新太さんの4作目の「こどものとも」になりますが、それまで描いたものとはまた違ったタッチになっています。見開きでイソップのおはなし一編とそのイラストを楽しめるようになっているのですが、赤をメインに、使う色をぐっと絞り込んだその絵は、前者の色を重ねた淡い雰囲気とは違いビビットな印象を受けます。
私は「三びきのライオンのこ」を見たときに、同時代に活躍した中谷千代子さん、あるいは後に絵本の仕事を始める西巻茅子さんを思い出しましたが、中谷さんの代表作「ジオジオのかんむり」は「三びきのライオンのこ」が出る一年前に「こどものとも」から出ておりますので、同じライオンを題材にしたお話ですしいくらか影響があったのかもしれませんね。また、西巻茅子さんは著書「子どものアトリエ」の中で、絵本を描き始めたきっかけにこの長さんの「いそっぷのおはなし」を挙げています。子どもの描く絵のようで新鮮で、こんな風に描いていいなら絵本を描きたいと思ったそうです。
こんな風に、現在まで愛される絵本をたくさん残してきた「こどものとも」は、作家たちの間でも多大なる影響を与え合ってきたのだなと、その作品から見えてくるものがあり、まとめて読むととても面白いですよ。
当店の在庫は復刻版となります。それでも20年以上前のものになりますが、どちらも状態はまずまずです。是非、日本の絵本界に新らしい風が吹き始めた当時の作品を味わってみてください。
当店の「こどものとも」の在庫はこちらです。
0コメント