手に触れる重み、ページを開いた時にふわりと香るインクと、そして少し埃っぽい匂い、指で触れる紙の感触。
古本屋だからといって、自分は殊更に本の「もの」の魅力について特権的に語ったりすることとはなるべく距離を保っ態度でいるのですけれど、それでもやはり、その「もの」自体が放つ魅力に抗えないような、特別な本はあるものです。
「CHANSONS DE FRANCE POUR LES PETITS FRANCAIS」
あの「ジャンヌ・ダルク」をはじめ、数々の素晴らしい絵本を世に出し、絵本の歴史に名を刻んだブーテ・ド・モンヴェルの絵本の中でも人気のある一冊ですね。
布装、花の装飾の金押し、リボン付き(リボンは切れかかっています)。
子どものための歌の絵本で、歌詞と楽譜が、モンヴェルの可愛らしくも壮麗なイラスト/装飾に彩られています。
画面の構成などは1877年に出版されたウォルター・クレインの幼子シリーズの影響も多分に感じられますが、しかしそれは既にモンヴェル独自の表現に昇華されています。
フランスの童謡なのですが、どの歌も、今ではyouyubeなどで調べると簡単に聞けるので、気になるものは検索してみると良いかもしれません。
印刷は勿論リトグラフ、状態もとても良いです。
庭園美術館ではこの絵本のもう少し後年の刷、1920年頃のものを1ページ毎に販売しておりましたが、自宅のピアノに飾っておく、と仰ったお客様もいらっしゃいました、素敵ですよね。
今回更新したこちらの本は1890年頃(初版は1884年)の刷の本です。後年の刷よりも色も鮮やかで美しいです。
刊行年月日については様々な点から推測がされます。
自分はこの絵本(布装の古い刷のもの)は、多分今までに10冊以上は見たことがあると思うのですが、1920年頃以降のものには刊行年の記載があります。
またその頃のものにはリボンが付いておりません。初版、2刷は扉ページが1枚多く、editionの記載があります。
またこの当店在庫のものは扉ページに押印「PITT&HATZFELD」というのがあるのですが、この社名は1880年〜93年に存在していたロンドンで楽譜の出版をしていた会社ですので、1893年以前のものであると推測がされます。
少しマニアックな話になってしまいました…。
貴重な本なので少し高額にはなってしまいますが、美しく、素晴らしい絵本ですので是非オンラインストアの方でも御覧ください。
当店のフランス絵本はこちらです。
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