1907年の10月のある朝、ぼくはミラノの都心にはだかで到着した。それまで、だれもそのことについて相談してくれなかったので、びっくりした。
谷川俊太郎さんもあとがきで引用しているこの言葉は、ブルーノ・ムナーリが自身の経歴の最初につけた言葉、つまり彼自身の生誕をユーモアを交えて語った言葉なのです。
1907年ミラノに生まれたブルーノ・ムナーリの作り出した数多くの作品には、そんなユーモアが溢れています。
先週末に終了してしまいましたが、神奈川県立近代美術館葉山館で開催していた(この後各地を巡回予定)ブルーノ・ムナーリ展に先週のはじめに伺ったのですが、この展覧会でも、そんなムナーリの作品の底に流れるユーモアは一貫して感じられました。
数年前に横須賀美術館で開催されたムナーリ展は、子どもたちが楽しめるように作られたものだったので、それはそれとして良かったのですが、今回の展覧会はどちらかと言うと大人に向けたもので、キャプション/解説も充実していて色々と興味深く、また楽しいものでした。
(横須賀美術館での展覧会は調べたらもう8年も前のことでした…。)
ムナーリの作品はどの作品を取り上げてみても、そこには楽しさが溢れ、しかしそれだけでない本という物自体に対する深い洞察も見て取れます。
本日はムナーリの絵本を多くオンラインストアの方で更新しておりますが、その中の1冊「THE CIRCUS IN THE MIST(きりのなかのサーカス)」もそんな1冊です。詳しい解説は以前書いたことがあるので、一番下に記載させて頂きます。
本日更新したこの絵本は1978年のアメリカ版で、現行のイタリア版や日本版とは配色が全く異なっているのも面白いですね(ちなみにイタリア版と日本版でも配色が違います)。
特に青色の印刷はこの刷りが一番素晴らしいです。他の版では青は水色のような明るい色が使われていますが、この刷りでは深い群青色がインクの湿り気を帯びたままのように、まるで霧の重さを紙がまとっているかのように感じるほどです。
ムナーリが生まれたミラノの霧については須賀敦子さんも書いていましたね。冒頭のムナーリの言葉の引用文も、訳は須賀さんによるものでした。(「木をかこう」より)
古い刷りのムナーリの絵本は入荷すること自体稀なので、他の絵本と合わせてオンラインストアの方でも見て頂けたらと思います。
当店のブルーノ・ムナーリの本はこちらです。
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