かこさとしさんの、その多くの素晴らしい作品について、沢山の人が愛着を持って語り、この作家に哀悼の意を寄せておりますので、私からは、代表作ではない一冊だとは思いますが、自分の、本に関わる仕事をしている一人として、この一冊の絵本とともに、哀悼の意を捧げさせて下さい。
「ほんはまっています のぞんでいます」
昨年復刊されましたが、元々は1985年に出版された「かこさとし・しゃかいの本」のシリーズの一冊です。
タイトルからなんとなく想像はつくかと思うのですけれど、本を読むことを勧める、かこさとしさんの優しさと、そして厳しさが詰まった一冊です。
あなたはほんがすきですか?
ちょっとドキッとする、こんな一文で始まるこの絵本は、なんだかんだと本を読まないことの言い訳をし続ける子どもに(またこの言い訳の感じが面白いのですが)、身近にある、本と関わりあえる場所や機会を懇切丁寧に教えてくれるのです。
本屋さんや図書館、読み聞かせ、司書や移動図書館や児童文庫のこと、子ども向けの本ですけれど、そうした紹介をしながらもちくりと問題提起も差し込んでいます。
例えば人口あたりの図書館の数(示されているのは1980年の数字ですが)の国別の比較など、データを示されるとその日本の現状には驚いてしまいます。
(ちなみに私の住んでいる神奈川県(横浜市)は都道府県別の、人口10万人あたりの図書館数9.3館とこの数は全国でワースト1位。さらに横浜市に限ると4.9館と更に酷くなります…。)
あとがきで加古さんが書かれていますが、子どもの頃は何かと本を読むことを勧められ、その機会も多いと思うのですが、年齢が大きくなるに連れて本を読むことから離れてしまう人はとても多いですよね。
こんな、本の海に日々使っているような自分でさえ、忙しい時には本を読むことが後回しになってしまうことも度々あります。
加古さんは、この絵本の中で子どもたちに語りかけながらも、その子どもの向こうにいる大人たちにも、語りかけています。
本、読みたいですか?
本は、好きですか?
と。子どもに本を読め読め言っても、自分が読んでいなければなんなのでしょう。本を読まないことの言い訳をしているのは、この絵本では子どもなのですが、現実では、本を読まないことの言い訳をしているのは、きっと大人たちなのです。
だって何読んだら良いかわかならいし、この歳でそんな本読んでるの?なんて笑われたくないしね、そもそも時間がないんですよ仕事や家のことで忙しくて、本読むと眠くなるよ、などなど、この絵本のなかの子どもの言うことと全く同じで、笑ってしまいますよね。
自分も色んな言い訳して、本を読むことを後回しにしてしまっているのではないかと、自戒もあります。
本、好きなんです。
本を読みたいと思っているんです。
だから、この絵本の最後の文章をそのまま引用させて下さい。
ほんはいつでも
いつまでも
まっています。
あなたがそばにきて
ほんをひろげ、
なかにかいてあることを
よんでくれるのを
のぞんでいるのです。
かこさとしさんのご冥福をお祈りします。
今晩はちゃんと、本を読もうと思います。
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