音楽が鳴り、くるくる回り出すメリーゴーランド、段々と速度は早くなり、周りの景色も移り変わり…。
昨日のマーヴリナの絵本はメリーゴーランドを外から見るタイプの絵本でしたが。今日の一冊の、Ati Forbergの「The Magic Carousel」と言う絵本はその木馬に乗った世界の絵本です。
タイトルはそのまま、魔法のメリーゴーラウンド、と言ったところですね。
お父さんと一緒に大きな公園に来たダナとリサは、そこにある動物園を覗いた後に、メリーゴーランドに乗せてもらいます。
ダナはもう5歳だから1人で乗り込み、まだ3歳のリサはお父さんに手伝って貰って、木馬に乗ります。
集札係にチケットを渡すと音楽が鳴り、メリーゴーランドはゆっくりと回り出します。
ダナはお父さんに手を振り、リサはしっかりと両手で木馬にしがみつきます。音楽は次第に早くなり、木馬の動きもどんどんと早くなります。
するとどうでしょう。木馬はそこから飛び出し、二人を乗せて駆け出していったのです。
Ati Forbergは1925年ドイツに生まれましたが、戦火を逃れるため幼いころに親とともにアメリカへ移住し、活動した画家/絵本作家です。
実はAtiの父親はあのバウハウスの創設者としても知られるヴァルター・グロピウスなのです。母親は作曲家グスタフ・マーラーの妻として知られるアルマ(アルマはマーラーの死後グロピウスと結婚するのです)ではなく、グロピウスの2番目の妻との子どもで…と歴史に名を残した芸術家たちの色恋のお話も面白いですけれど、本のお話とは逸れてしまうのでこの辺りで。
Atiはそんな芸術家の一家で生まれ、あのブラック・マウンテン・カレッジでヨゼフ・アルバース(教え子にはサイ・トゥオンブリやロバート・ラウシェンバーグもいます)に師事しましたが、そのまま純粋な美術/芸術の仕事に入っていくのではなく、子どもの本のイラストレーションの作品に集中し多くの作品を残しました。
その作品の魅力はこの絵本に遺憾なく発揮されています。
落ち着いた色調を基調としながらも、何処か詩的とも言えるような叙情性を秘めたその絵は見るものの胸に深く染み込んでいきます。
ダナとリサ、二人を乗せた木馬は公園を横切り街へ出て、二人に色々な景色を見せてくれます。なびく馬の鬣と二人の少女の髪、リサの青いリボン、木馬は二人を乗せて颯爽と駆けていきます。
やがて音楽は緩やかになり、二頭の馬と二人は公園へ戻っていくのです…。
夢を見るようなイラストレーションで、魔法の掛かる時間であるメリーゴーランドに乗る時間を見事に表現した、美しい美しい絵本です。
Ati Forbergの絵本は本日この絵本の他にも3冊更新しておりますので、是非あわせてご覧ください。
ところでこの作家の名前ですが当店のお店の名前ととても似ていますが…関係はないんです...。
当店のAti Forbergの在庫はこちらです。
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