「回転木馬」タチヤーナ・マーヴリナ

メリーゴーラウンド/回転木馬、この言葉の響き。何処か懐かしく、甘く暖かいノスタルジーを感じるような。

遠くから、段々とアコーディオンの音が聞こえてきて、ゆっくりと、木馬が回り始める。電飾は夜の暗闇の中で眩く輝き、私は柵につかまって、木馬に乗る子どもたちが手を振るのを、飽きもしないでいつまでも見ている。

反対に、メリーゴーラウンドに乗った記憶は殆どなくて、いつも回る木馬を見ながらそこからはどんな風景が見えるのだろうと思いを巡らせて…、結局乗らないままでいるのが好きだったのかもしれません。

いつも民芸品のような可愛らしい絵を描き見るものを楽しませてくれるタチヤーナ・マーヴリナの絵本、こちらはロシアの土人形たちが主人公の絵本「回転木馬」です。

素敵な回転木馬に集まってくる、様々な人々や動物たちの人形の様子をリズムのいい言葉で語っている絵本なのですが、この本を読んでいると、そうやってこの絵本のように回転木馬を舞台に人形遊びを、まるで自分がしているかのように、思えてきます。

以前紹介したときにも書きましたが、20世紀のロシアを代表する画家タチヤーナ・マーヴリナは、二十代後半にロシア・アヴァンギャルド(当時のロシア帝国・ソビエト連邦における芸術運動)に参加し、その後、昔話などの挿絵を手掛けるようになり、後に国際アンデルセン賞を受賞する絵本作家となりました。

マーヴリナの描く素朴な線と鮮やかな色彩は、彼女自身が収集していた古い民芸品やイコンからの影響を受けていると言われています。

この絵本も、マーヴリナはそんな自分の所有している民芸品を並べて、一人で人形劇をするように、作ったのでしょうか。

いつまでも回るメリーゴーラウンドの周りに人形を並べ、この三人は家族で、こっちのカモは順番待ち、わんぱくな二人の子どもは屋根に乗っちゃって…なんて、人形遊びをするようにいつまでも、この絵本のページをめくっていたいのですけれど、お話は終わって音楽は止み、最後のページを閉じればもうおしまい。

耳にまだ残る賑やかな音楽。人々の楽しそうな話し声や笑い声。

心残りで、まだお腹も空いていないで、それでなんだか寂しかったら、本をひっくり返してまた、最初のページを開けば、すると聞き覚えのある音楽が…。


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