「THE CONFERENCE OF THE BIRDS」Peter Sis

チェコ出身の絵本作家ピーター・シス。邦訳されたものも数多く出版されておりますが、ガリレオやダーウィンなどの伝記絵本が有名でしょうか。

本日紹介する「THE CONFERENCE OF THE BIRDS」はピーター・シスの邦訳されていない作品のひとつです。絵本と言うには分厚く、画集のように見応えのある本なのですが、物語の基盤になっているのは12世紀のペルシアの詩人ファリードゥッディーン・アッタールの書いた「鳥の言葉」(「または「鳥の会議」)という長編詩で、彼がスーフィー(イスラーム神秘主義)から学んだ知識を物語にしたものだそうです。

この遠い昔のアッタールの詩に関してはとてもここでは詳しく触れられないのですが、日本語でもこの詩を読むことはできますし、研究書も出版されていますので、ご興味ある方は是非読んでみてください。

ここではほんの少しだけ内容に触れておきます。

世界中の鳥たちが集まり、自分たちの王様を探すための会議を開きます。

鳥たちの中でいちばん賢いヤツガシラが、スィーモルグという鳥の王様がはるか遠くの山にいるので、会いに行こうと提案します。

いくらかの鳥たちは言い訳をしてそれを拒み、残りの鳥たちだけで旅立ちます。途中、「探求の谷」や「愛の谷」「無の谷」などを越え、少しずつ鳥たちは脱落していきました。とうとう最後に残った30羽が山に辿りつきますが、そこにはスィーモルグの姿はありません。そして、鳥たちは自分たちこそスィーモルグであることを悟るのです。

このアッタールの鳥のお話にシスが全編に渡り絵で描き起こしたのがこの本なのですが、シスらしい細かなこだわりが随所に見られ、ほかの絵本作品で見られるページのなかに情報を凝縮したかたちではなく、たっぷりと枚数を使い少しずつ少しずつ鳥たちの旅を描いた大作となっています。

遠い遠い異国の、神話の世界へ入りこんだような、地図のような、記号のような絵は、見るものによって様々な見え方をするのではないでしょうか。

こちらは英語版で、文章は短く簡単な言葉で綴られていますので、充分お話も読みと取れるかと思います。図書館除籍本ではありますが、状態もよく、しっかりしたハードカバー製本に、中の紙も織りのある上質な紙が使われています。

シスが好きな方はもちろん、鳥が好きな方には絵も内容もとても興味深い本かと思います。こういった、本を開くと見たことのない壮大な世界が広がっていて、そこに自分自身も入んでしまえる本に出会うと、そうだった、本の向こうは無限なんだったといつも嬉しくなります。

シスの中でも特にお薦めの作品です。ぜひサイトの方でもご覧ください。

また、写真奥に写っているのは、当店オリジナルのブックエンドで「ヤツガシラ」がデザインになったものです。こちらもサイトにて販売中です。


THE CONFERENCE OF THE BIRDS」Peter Sis

BIRD BOOK END(ヤツガシラ/オニグルミ)

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