「Kleines Liederbuch zur Weihnachtszeit」Lilo Fromm

横浜も雪が降り積もっています。

ただ家でじっとしているだけなら良いのですけれど、通勤や通学、外出しなければならない用事がある方は大変なことと思います。どうかお気を付け下さい。

雪が降っている、そう気付くのはいつも、部屋の外が妙に静かだと思うことからでした。

窓に近づいて外を眺めると、普段の景色が白く一変している。

辺りは静まり返って、普段は時折聞こえる隣家の音も一切聞こえず、自分以外のこの町のすべての住民が、自分だけを置いて何処かへ行ってしまったような、そんな不思議な静けさで、雪が積もっていることに気が付くのです。

いつか当店で紹介した際に、夜の作家、そして物語の作家と書いた記憶があるベルリン出身の絵本作家リロ・フロムですが、彼女はもうひとつ、雪の作家でもあると思います。

先日オンラインストアで更新したリロ・フロムの豆本絵本も、彼女の雪の絵本のひとつです。

「Kleines Liederbuch zur Weihnachtszeit」(クリスマスの小さな歌の本)と題されたこの本は手のひらサイズの小さなうたの絵本です。

見開きページ毎にクリスマス、そして冬の歌が楽譜とイラストとともに掲載されています。

リロ・フロムが描く雪、そしてクリスマスの風景は、不思議な奥行きを持ってその絵を見るものを彼女の絵の中に誘い込みます。

気付いた時にはもう、彼女の絵の中に自分がいて、そこで周りを見渡しているのです。

これはリロ・フロムの絵が「説明的でない」ということに起因しているのではないでしょうか。

あるページでは雪の中でランタンを掲げてひとり歩いて行く子どもが描かれています。子どもは奥の方へと歩いていて、読む私達はその後姿を見送る事が出来るだけです。

彼が何処へ、そして何のために雪の中を歩いているのか、リロ・フロムは何も教えてはくれません。

そのページの歌は「Als ich bei meinen Schafen wacht」羊飼いがキリストの誕生を知る歌です…。

彼女によってぽんと投げ出されたあるひとつの世界。

その世界のことを何も知らない読者は、この子どもは何処へ向かっているのだろうかと、その背中を見送りながら、もう既に絵の中の世界へ入っているのです。

この、絵の中へ読者を誘い込む不思議な力は、リロ・フロムのどの作品でも強く表れています。

リロ・フロムの豆本絵本はこの絵本の他にももう一冊ございますので、是非オンラインストアのほうでもご覧ください。


当店のリロ・フロムの絵本はこちらです。

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