Kate Greenaway's 19th Century Books

本日はクリスマス前最後の更新ということで、特別な本を更新しました。

先日パリで買い付けてきた本の中からケイト・グリーナウェイの19世紀当時の本、それも珍しいフランス語版の絵本で3冊です。

うち2冊は「ALMANACH」の1887年版と1888年版です。

この「ALMANACH(アルマナック)」というのは、行事や聖人の記念日などを記した暦のことで、グリーナウェイは1883年からエドマンド・エヴァンスとともにこの出版を始めます。

この可愛らしい絵本はたちまち人気を呼び、本国イギリス、アメリカの他にもドイツやフランスでも出版されました。本書はその中でも珍しいフランス語版です。

暦のグリーナウェイのイラストの可愛らしさ、そして当時の多色木版摺りの美しい印刷には思わず溜息をついてします。

日本では時折ギャラリーなどでこのアルマナックを各ページごとバラにして額装したものを見掛けるくらいで、このような美本の状態で、しかもフランス語版を見ることは殆どないのではないでしょうか。

そしてもう1冊は「Scènes Familières」これは英語版では「Mother Goose」として1881年に発売されたもののフランス語版で、発売は恐らく翌年の1882年のフランス語版初版です。

刷は勿論エドマンド・エヴァンスによるものです。

エヴァンスは近代絵本を生み出した最重要人物とも言える彫版師/出版人で、この人のプロデュースによって、ウォルター・クレインそしてケイト・グリーナウェイと言う歴史に名を残す偉大な絵本作家が世に出たのでした。

多色刷木口木版の技術を開発したエヴァンスのつくる美しい印刷のカラー絵本は、この二人の素晴らしいイラストレーションを描く作家との出会いによって生まれた傑作絵本です。

この「Scènes Familières」はほるぷ出版による「復刻マザーグースの世界」の復刻版(英語版「Mother Goose」)が当店にも在庫があったので一緒に並べておりますが、もちろんこの復刻版も充分に美しいのですけれど、オリジナルのエヴァンスのものは色の出方が全くと言って良いほどに違います。

おそらく当時としては驚異的だったと思われる色数の多さ、インクの湿り気が分かるようなしっとりとした柔らかくそれでいたハッキリとした発色。

活字の部分の活版印刷も美しく、こうした部分には活版印刷が好きな方も惹かれるのではないでしょうか。

エヴァンスはこの本の出版に際して、グリーナウェイから18世紀のlaid paper(賽の目紙)のような紙を使って作って欲しいと注文があったのですが、このような紙に多色印刷をすることは不可能だったので、様々な工夫をして紙を作り、この絵本を作ったそうです。

当時の最高の職人、そして作家が、力を合わせて作った素晴らしい絵本を是非ご覧ください。


グリーナウェイの本の当店在庫商品はこちらです。

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