小さい頃夢中になって遊んだ玩具と言われて私が思い出すのは、プラスチックの箱の中に沢山の小さなブロックが入っていて、それを蓋の上の無数に空いた穴の中にはめていき絵を完成させる、というものでした。あれはなんという玩具だったんだろう、ブロックでアートするみたいなものだったよなぁと「ブロック、アート、おもちゃ」で検索したら、まさしく「ブロックアート」という名前の玩具でした。最初は、これを作りましょう、みたいな紙を見ながら遊ぶのですが、徐々に自分で絵を設計するようになり、気に入ったものがつくれた時には、バラバラにしてしまうのが惜しくてそのまましばらくしまっておいたものです。
長くなってしまいましたが、玩具が子ども時代に与えてくれたものというのを、大人になった自分自身が分析することはとても難しいと思うんです。好きだった、嫌いだった、と思い出せることは出来ても、あのブロックが今の自分の何を形成したのかなんてまるでわかりません。ですから、そんな大人の自分たちが、子どもにどんな玩具を買ってあげたらいいのかって、考えてもわからないと思うんです(それは絵本も一緒ですね)。
ただ、大人の私たちがひとつわかることは、ロングセラーとなり、多くの世代の人たちの手を渡ってきたものは、単純にそれだけ沢山の人に愛された歴史があるということ。絵本では、はらぺこあおむし、ぐりとぐら、スイミーなど、この何十年の間、途切れることなく本屋さんに並んでいます。けして、だから良い本、だから良い玩具、ということではなく(いえ、そうなのかもしれないのですが)、愛される理由は、明確でなくても、必ずそのものの中に備わっているはずです。
そして、ようやく今日の本のお話なのですが、こちらはスイスの玩具メーカーNaef(ネフ社)の作品集です。1958年、当時家具職人であったクルト・ネフが顧客の助言を基に家具作りの合間に作ったリボンの形の積み木「ネフスピール」がその記念すべき最初の玩具でした。見たことのない新しい形、美しい色、自由な遊び方がたちまち人々を魅了し、今日ではもう60年分もの子ども、あるいは大人に愛されてきたことになります。20カ国以上の国に輸出され、世界中に多くのファンを持つNaefですが、日本でも1971年から販売され始めます。皆さんの中にもNaefのファンの方がいらっしゃるのではないでしょうか。クルト・ネフは「おもちゃは様々な価値(経験、機能、関係および造形の価値など)を仲介するもの」と述べています。そして、その役割を果すために、たくさんのこだわりを掲げて玩具を作ってきました。彼が亡くなった今でも、彼の意匠を継いだスタッフ、デザイナーによって新しい玩具が生み出されています。以前、当店でも紹介したこうのあおいさん(この本ではフーバー葵と表記されています)の作品ももちろん載っています。
シンプルであり、無限の可能性を秘めている、そして人間の手作業で仕上げられる創業時から変わらない作り方。Naefの玩具はネフが玩具を通して子どもを愛し続けたその時間を、遥かに超えてこの先何十年も、子どもたちに愛され続ける玩具なのではないかと、思うんです。
是非、美しく心躍るネフの玩具の世界を覗いてみて下さい。巻頭のデザイン評論家柏木博さんのテキストもとても面白いです。
当店在庫はこちらです。
「neaf design ネフのおもちゃ」クルト・ネフ 柏木博
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