「A PEACEABLE KINGDOM」Alice & Martin Provensen

当店でも度々紹介し、人気のあるアメリカの絵本作家夫妻、Alice & Martin Provensenの作品には大きく分けて二つの傾向/作風があると思います。

その一方はデザイン性の強い、50’sからのアメリカ絵本にしばしば見られるカラフルで構成的な画面を作るもので(ディズニー・スタジオの影響が強いと思われます)、もう一方はこの絵本のような、抑えた色調、アースカラーを中心としたイラストレーションで、それは例えば何処か古代エジプトの壁画を思わせるような、と感じていたのですが、後者の傾向はもしかしたらこの作家のシェーカー的な作品、と言ったほうが良いのかもしれません。

シェーカーというのは17世紀末頃に起源を持つキリスト教プロテスタント系の一派で…と、詳しい話は他の文献に譲ったほうが良いかと思いますので省略いたしますが、このアリス&マーティン・プロヴェンセンはこのシェーカーに関係する絵本をいくつも描いているのですね。

夫妻がシェーカー教徒だったのかは少し調べただけではわからなかったのですが(もう厳密な意味でのシェーカーの人々はほとんどいないそうです)少なくとも、このシェーカーの人々のライフスタイルにはとても共感していたのでしょう。

シェーカーと聞いて、多くの人がすぐに思い浮かべるのはあの曲げ木の美しい木箱、シェーカーボックスではないでしょうか。彼らはその宗教生活の中で過剰な装飾を排した質素なものを好み、幾つもの素晴らしい日用品、家具を生み出しました。

それらは今ではシェーカー家具と呼ばれ、ここ日本でもとても親しまれていますね。

このアリス&マーティン・プロヴェンセンのABC絵本「A PEACEABLE KINGDOM」もそんなシェーカーの側面を持つ絵本で、副題は「THE SHAKER ABECEDARIUS」と付いています。

「ABECEDARIUS」と言うのは規則的な順番でその詩句の最初の言葉が始まる詩のことで、それはアクロスティック(折り句)になっています。

少し説明が煩瑣になって来てしまい申し訳ないのですが、ABC絵本というのも、この「ABECEDARIUS」の一種なのですね。

このABC絵本はそんな風に文字として並べられた幾つもの動物たちの名前がリズム良く並べられています。

中には、ん?と思うような馴染みのない動物の名前もありますが、すべての動物は夫妻の美しいイラストで描かれているので、その戸惑いも楽しみに変わります。

先に挙げたようにそれは抑えた色調で描かれ、描かれる人々も、恐らくシェーカーの人々の伝統的な服装で(自分にはアーミッシュ系の服装のように見えますが、この辺りは共通の起源を持つ集団なのだと思います)、この独自の文化を持った人々の素朴な生活が、暖かく伝わってきますね。

今日は絵本以外の説明が多くなってしまいましたが、こうした文化的背景を別にしても、このアリス&マーティン・プロヴェンセンの絵本は充分に楽しむことが出来ます。

勿論、こうした絵本から、全く違った生活スタイルを持つ人々を知ることが出来るのも(それも文章ではなく、こうしたイラストでなんとなく感じ、身体的に知ることが出来るのも)、とても楽しいですね!

是非オンラインストアの方でもご覧ください。

本日はこのアリス&マーティン・プロヴェンセンのシェーカー系の作品を3冊更新しております。

当店在庫はこちらです。

A PEACEABLE KINGDOM」Alice & Martin Provensen

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