ポール・エリュアール、オードリー・フォンドゥカヴの「グランデール」と言う絵本を以前紹介した際に、エリュアールと言うと、大島弓子さんの「ローズティーセレモニー」で印象的に使われている「自由」という詩がとても好きです、と書いたのですが、この「自由(Liberté)」がそのまま絵本になっているものがあったのですね!
ぼくの生徒の日のノートの上に
ぼくの学校机と樹木の上に
砂の上に 雪の上に
ぼくは書く おまえの名を
こう始まるこの詩は、繰り返し繰り返し様々なものへ、その「おまえの名」を書いていくことが歌われます。以下引用はすべて安東次男訳を使わせていただいています。
金色に塗られた絵本の上に
騎士たちの甲冑の上に
王たちの冠の上に
ぼくは書くおまえの名を
この詩は「詩と真実 1942年」と言う詩集の一篇で、ナチス・ドイツに占領されたパリで、その抵抗運動のさなかに書かれ、発表されたものでした。
破壊されたぼくの隠れ家たちの上に
崩れおちたぼくの燈台たちの上に
ぼくの無聊の壁たちの上に
ぼくは書く おまえの名を
この絵本の訳者であるこやま峰子さんがあとがきに書いています。
この詩はエリュアールが抵抗運動の同士でもある二番目の妻ヌーシュに捧げた愛の歌です。この「おまえ」はこのヌーシュのことですが、それを単なる愛の歌に終わらせずに、エリュアールが求めてやまなかった「自由」を全人類的な愛に重ね合わせて思いを綴ったところに多くの人々の共感と普遍性があるに違いない。
詩の中では、最後にその名が出てくるのです。
引用しているのは極一部で、繰り返し繰り返し、その名前は書かれ、歌われます。
そして最後に、その名が叫ばれるのです。
そしてただ一つの語の力をかりて
ぼくはもう一度人生を始める
ぼくは生まれたおまえを知るために
おまえに名づけるために
自由と
この絵本の、絵を描いているクロード・ゴワランも素晴らしいです。是非ご覧ください。
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「自由 Liberté」ポール・エリュアール クロード・ゴワラン
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