スズキコージさんの絵を見る時にいつも感じるのは、その力強さ、神秘的とも感じられるような不思議なエネルギーが横溢していて、それは例えばギリシャ神話、北欧神話の星の神々のような巨人的な力、そんな力を感じるのです。
この北原白秋訳の「まざあ・ぐうす」にスズキコージ(当時は鈴木康司)さんが挿絵を付けた絵本、この本でも、いいえこの本では特に、そんな力強さが感じられます。
北原白秋は序文で日付を記していて、そこには大正九年となっているので、この翻訳はもう今では随分と時間の経ったものですが、ちょっとした固有名詞を除いては、古さというものは全く感じさせません。
もともとこのマザーグース/童謡というジャンルが既に、とても長い年月を経て形成されてきたものということもあるのでしょうが、この北原白秋の訳も、色あせないだけの強さを持っています。
それでも、やはりこの本を特別なものにしているのは、スズキコージさんの挿絵だと思うのです。
ほぼすべてのページに、カットなどではなくページを横断していくように縦横無尽に(それはマザーグースの歌そのもののようでさえあります)絵は描かれ、この童謡集を開く喜びを与えてくれます。
この本はまるで画集のようなボリュームでスズキコージさんの絵を見られるのですが、でもそれは決して画集ではなく、この「まざあ・ぐうす」の本の挿絵であるということ、このことも、この本の魅力のひとつかもしれません。
テキストと絵がその場で競い合うようにこの不可思議な歌の世界を描き出し、踊り、遊んでいるように感じられます。
スズキコージさんの絵と北原白秋の日本語が、奇跡のように紙の上で舞っているのです。
間違いなく初期のスズキコージさんの代表作のひとつだと思います。
当店在庫商品は復刊版ではなく1976年の初版のものです。この版のものの中ではかなり綺麗な状態のものですので、ぜひオンラインストアでもご覧ください。
当店在庫はこちらです。
「まざあ・ぐうす」北原白秋 鈴木康司
0コメント