「KLING KLANG GLORIA」H.Lefler and J.Urban

美しさ、という言葉にはきっと人それぞれ違う形や感触を持っていて、勿論そのどれもが全く正しい美しさなのですけれど、その「美しさ」と言う日本語の言葉の持つ、何処か気品が漂い、凛としていて、耽美的でもある、そんな「美しさ」という音と字のまとっている感触、そうした「美しさ」のイメージにぴったり合うので、この本を見ると思わず溜息して、美しいなあ、と呟いてしまいます。

「KLING KLANG GLORIA」(素晴らしい歌の響き ドイツの民謡とわらべうた)1907年にウィーンで出版されたこの本(当店在庫品はベルリンコレクションの復刻版です)はヨーゼフ・ウルバンとハインリッヒ・レフラーの二人によって作られました。舞台芸術や建築の仕事もしていたこの二人の共作は、当時のユーゲント様式の特徴がとてもよく表れていると言うのがこの絵本の一般的な評価でしょうか。

ゲーテやシラーの詩、シューベルトの曲などよく知られたドイツのうたが載っている絵本で、左ページに楽譜、右ページには絵が、そのどちらも美しく装飾され、見るものを魅了します。

全体の整った画面構成、細部の美しさ、こうしたものがまず「美しさ」のイメージを高めています。

アール・ヌーヴォーや、クリムトなどのウィーン分離派を思わせる部分もそこかしこに見られるのですが、個人的にはナビ派、特にヴュイヤールと似た感触がするのは色彩からでしょうか。

細部までとても美しく構成された画面を作っているのですが、それが華美になり過ぎず、何処か湿ったような印象を受けるのも、似ていると思わされる要素かもしれません。

その色彩、湿り気を帯びたような色彩は、描かれている幾つもの花を見るとよりわかる気がします。花々は殊更その色で自らの美を示すのではなく、例えば伏した目で、呟いた言葉で、その美しさを感じ取れるような、そんな色をまとって佇んでいるのです。

この本を開けば、誰もがその「美しさ」に胸を打たれるのではないでしょうか。

そして、この本の中の幾つかの絵は、そうした美しさだけではなく、もう一つ美しさを支える大きな要素「憧憬/思い出」を感じさせるものもあるのです…。

是非手に取って見て頂きたい本です。


また、本を置いているベンチはレコード/アンティークショップのRさん(@dor_rec)にて取り扱いのあるドイツ製70’sの折りたたみ式ベンチです。所々剥げている箇所も味わいがあって素敵です。気になりましたら是非Rさんにお問い合わせ下さい。


当店在庫はこちらです。

KLING KLANG GLORIA」H.Lefler and J.Urban

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