10月第4週instagram紹介本

先週インスタグラムにて紹介させていただいた本でございます。


まずはこちら

佐々木マキさん絵、角野栄子さん文によるアンデルセンの「絵のない絵本」です。

謎めいたタイトルですがお話は、ある絵描きのもとに毎晩お月さまがやって来て、そのお月さまが見た世界中の場面が語られる、と言うお話ですね。インド、スウェーデン、中国からグリーンランドと月の光の届いた世界中の場所の小さな物語をお月さまが三十三夜、聞かせてくれるのです。

佐々木マキさんの可愛らしくも不思議な感触を持つ絵がこの小さな物語たちを引き立てています。

もともと佐々木マキさんは1967年に私家版として「えのないえほんのためのえ」としてこのアンデルセンのお話を絵本として作っていました。(この私家版は2005年に復刻されております)

まだ学生だったその頃から佐々木マキさんはこのアンデルセンの話に魅力を感じていたのですね。本書は2004年に新たに書き直され、角野栄子さんによる文で出版されたものです。ひとつひとつのお話は1ページだけと短く、一気に全て読んでも、毎晩ひとつずつ読んでも楽しめると思います。




続きまして

日本では「歳をとったワニの話」で知られているレオポルド・ショヴォーの「Fables de la Fontaine」です。

ラ・フォンテーヌの寓話はフランスでは小さな頃に学校で暗記させられるそうで、フランス人は皆が知っている国民的な作家の一人ですが、そのラ・フォンテーヌの寓話に、20世紀を代表する寓話作家でもあるレオポルド・ショヴォーが挿絵を付けたものが本書です。

ショヴォーは第一次世界大戦に軍医として従事したことや、息子を自分の手術によって亡くしてしまった経験がその作風に影を落としているかのように、何処か不穏な空気の漂う絵を描きます。ですが決してそれはただ暗いだけのものではなく、恐らく一流の風刺画家だけが持ちうるような可笑しさも併せ持っていて、読むものを魅了してくれます。

この、3世紀を隔てて生きた寓話作家二人の共作は、まだ日本では出版されておらず、当店に入荷したものはフランス語原書版ですが、ラ・フォンテーヌ寓話自体は翻訳が幾つも出ていますので、それと一緒に読んでも良いですし、何よりもショヴォーの絵がそのお話の全てを物語っているので、フランス語初学者にも読みやすく、お勧めできます。



次は

日本でもたくさんの本が翻訳され愛されているポール・ガルドンですが、最近はあまり見かけなくなりました「ジャックはいえをたてたとさ」です。

マザーグースの、古くからある積み重ね歌(起こった出来事が繰り返されながら続いてゆく歌)にガルドンの躍動感のある絵がぴったり合っていますね。繰り返しの歌のリズムとガルドンのダイナミックに、そしてまた抑揚を持って展開していく絵がとても楽しい一冊です。写真の猫を見てもその魅力の一端が感じられるかと思います😊

本書には発売日の表記が無いのですが、重版表記もないので恐らく1979年の初版だと思われます(国会図書館の情報より)。

発売元の佑学社は数々の素晴らしい海外の絵本を翻訳し日本に紹介しましたが、残念ながら90年代はじめには倒産してしまい、権利が引き継がれなかった本の多くは今では絶版となってしまっています。

当店では佑学社の本の買い取りに力を入れております。もしお持ちでしたら是非ご相談ください。次のお客様へとお渡しする役目を責任を持って務めさせて頂きます。どうぞ宜しくお願い致します。



以前からずっと紹介したいと思っていた一冊です。ようやく入荷できました。

「木のうた」ジョールジュ・レホツキーです。

レホツキーは1901年生まれのハンガリー出身の(のちにドイツ国籍を取得)建築家/画家で、幾つもの教会や修道院などの建築、内装の仕事を手掛け、受賞歴も多数あります。

レホツキーの本業はそうした仕事なのですが、彼は二冊だけ絵本も出版しており、それはレホツキーの画業の凝縮された素晴らしいものとなっています。

その二冊の絵本「鳥のうた」「木のうた」はお孫さんのために作られたもので、本書、木のうたは四季折々の木の姿が、人間の営みとともに自然の中で美しく描かれています。

表紙の木にはその四季の全てが描かれていますね。

レホツキーの絵を眺めていると、遠い国の絵であるとわかるのに、何故かとても懐かしい気持ちになります。

この日本語版を出版していたのも昨日名前をあげました佑学社ですね。木島始さんの言葉も美しいです。自信を持ってお勧め出来る一冊です。



最後は大道あやさんの「たろうとはなこ」です。

大道あやさんは広島出身の画家/絵本作家です。60歳を過ぎてから絵を描きはじめ、91歳のときに自身も経験した広島原爆についての絵を最後に筆を置くまで、幾つもの絵や絵本を残しています。その間には日本美術院展における入選やブラティスラヴァ世界絵本原画展で優秀賞を受賞したりと、明るく生き生きとしたその絵は国内外で評価されています。

この「たろうとはなこ」もその例外ではなく、絵の中には花が咲き乱れ、犬と猫は飛び跳ね駆け回っています。

もしかしたら不気味に感じてしまう人もいるかも知れないと思ってしまうほど、野生的と言いますか、原始的な力を持つ絵を描くのは、大道さん自身の悲惨な経験から解放されるための、力強い反撥力からなのかも知れません。

お話の中で犬と猫(たろうとはなこ)が言葉を話すことなしに、まるで子供のような繊細な心の動きを示して見せる様にも、洗練されたものではなく原始的な、しかしそれ故に力強い生きる力のようなものを感じます。


0コメント

  • 1000 / 1000