「いりふねパリガイド<PARIS GUIDE>」堀内誠一

旅行へ行く前には、どの程度その地のことを調べて行くでしょうか。

最近ではgoogle mapのストリートビューで行く場所の道順を見てから行く人もいると聞きます。自分はそれはそれで良いと思いますけれど、調べると言っても色々な面がありますよね。

行きたいお店や見たい劇場の演目を調べたり、訪れたい場所への交通手段、はたまた、その町や、建物の歴史や文化をあらかじめ調べたり、そうしたことの延長かもしれませんが、行く先の町や国の出身の作家が書いた小説を読んでみたり、そんなことを思うと、もう旅行へ行く前から、旅行が始まっているような気がしてきます。

旅行へ行く前から旅行が始まっているなら、旅行へ行く前に旅行を終わらせることも出来るかもしれません、なんて言ったら可笑しいでしょうか。

この本「いりふねパリガイド」は1976年発行のパリのガイドブックです。

今でも出版され続けているパリ発の日本語のフリーペーパー「OVNI」の前身、「いりふね・でふね」(1974年創刊の、堀内誠一さんが中心となって作ったフランス初の日本語ミニコミ誌)がもとになったガイドブックです。

全ページにわたって堀内誠一さんのイラスト/デザインを楽しむことが出来る本なのですが、もう40年前の本です、ここに載っているお店のどの程度が今でもあるのでしょうか。

また、普通のガイドブックと違って現地のミニコミ誌が編集/制作したものですので、現地パリの雰囲気が細かに描かれています。

パリのカフェごとの客層、通りの雰囲気、人々のよく口にする言葉、そうしたものが実際にそこを歩きながらレポートしているかのように書かれているので、通り一遍のガイドブックとはかなり毛色が違うのですね。

ただそれも、もう40年前のことなのです。お店があったとしても、そこへ訪れる人々は変わり、人が変われば雰囲気も変わり、文化も変わります。きっと今のパリとはもう随分と違うものなのでしょう。

現地に近いガイドブックと言うものだったので、それが不幸にも/幸運にも、今とは全く違う町の説明をしている本になっているのです。

当然と言えば当然ですよね。

でもだからこそ、今はもうない町の、70年代のパリを体験できる、稀有な本になっているのではないでしょうか。

スマートフォンもインターネットもまだ無かった時代のパリの通りを、この本で歩くことが出来るのです。

旅行へ行く前に旅行を終わらせることも出来るのは、そもそもこの本に載っているパリが、もう何処にもないからです。

もう行くことが出来ない場所へのガイドブック、なんて言うと、ちょっと素敵な気がしますね。

当店の在庫商品には、巻末についている堀内誠一さんによるフランスのイラスト地図ポスターも付いていますよ。これがまたとても楽しいんです!部屋に貼りたい!

堀内誠一さんが好きな方、フランス好きの方にはお薦めです。


当店在庫はこちらです。

いりふねパリガイド」堀内誠一 絵

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