本日はチェコ絵本を少し更新しております。
その中から、当店の在庫の中でもかなり古い本ですね、1921年発行のRudolf Matesの絵本「O kohoutkovi a slepicce」です。
1921年というとチェコは対戦間のチェコスロヴァキア共和国時代で、あのミュシャも、ヤナーチェクも現役で活躍し、また所謂チェコ・アヴァンギャルドと言った芸術運動も花開き始めていた時期でもあります。
しかしこの絵本を見て、そういった当時の最先端の芸術を感じるかというと、決してそうではないかも知れません。
そこから受ける印象は、もっと素朴なもの、表現というよりも自然そのものへの眼差しを感じます。これは作者の資質でしょうか、それとも絵本という表現分野の特徴なのでしょうか。
美しい色彩の中の(印刷が素晴らしく良い本なんです!)人間たちと鶏、この絵本を見ていると絵の中の風まで感じられるような気がしてくるほどです。
すべてのページの絵は文様で飾られ、ユーゲントシュティール、アール・ヌーヴォーなどの様式からの影響も勿論感じられます。また絵本で言うとウォルター・クレインの画面構成を感じさせるページなども見られるのですが、この絵はどの様式とカテゴライズできる感じでもなく、時代の流れの中でも、伝統に根付いたもの、作者の中の自然を描こうと苦心したように見えるのです。
こうして見てみると、様々な文化/芸術が流入し、そしてまた新しい芸術が花開いていった時代に、そうしたものからの影響を受けつつも、表現が本質から乖離しないように努めた、素朴な美しい傑作絵本とも言えそうです。
この絵本は印刷がとても美しいのですが、装丁が少し変わっているのも面白いです。
表紙と裏表紙が、布装の上から紙の表紙絵を貼り付けたものになっていて、大量生産品ではありえないような、まるで私家版の本のような作りになっているんですね。
撮影に使っているのは当店で販売しているブックフレームの中サイズ(壁掛け)です!
どうぞこちらもあわせてオンラインストアでも御覧ください。
当店在庫はこちらです。
「O kohoutkovi a slepicce」Rudolf Mates
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