こちらは福音館書店の「こどものとも」の手本となったフランスの絵本のシリーズ「ペールカストール」の代表的な作家のひとり、フェードル・ロジャンコフスキーの絵本です。
ロシア出身のロジャンコフスキーは戦渦を逃れパリへと辿り着き、そこでペール・カストールの生みの親、教育者のフォシェ夫妻と出会いペールカストールシリーズの作家となり成功を収めました。
しかしその後フランスもまた戦争に巻き込まれ、彼は各地を転々とした後アメリカへと移り、その地でも多くの作品を作り1956年にはコールデコット賞も受賞しました。
さてこの絵本はジャンルで言えば「科学絵本」のジャンルなのでしょうか。
「くまのブウル」は熊の、「野うさぎのフルー」はうさぎの生態を描いた絵本です。けれど普通の化学絵本よりもずっと、お話形式になっており親しみやすい作りになっています。
どちらも子どもから大人のうさぎ、熊になるまでの両者の生態が描かれており、お話仕立てになっているのでその動物に感情移入しやすく、お子様でも科学的な内容に入っていきやすい工夫がされているのですね。
戦渦を逃れ、各地を転々とした絵本作家は幾人もおりますが、その誰もが自身の作品に少なからず戦争の影を見ることが出来る気がします。しかしこのロジャンコフスキーだけは、その影が見受けられないのが少し不思議です。
動物の絵本を多くつくったその作風は明るく優しいイメージの強いもので、尚且つ芸術的にも高いレベルを保った美しい絵本を作り出しています。
似た作家を上げるのならレオナード・ワイスガードでしょうか。彼もまた美しい絵の科学絵本を幾つも作っていますね。
この絵本のお話を作っているリダ・フォシェは上述のペール・カストールの生みの親のひとりです。このシリーズは「子どもの教育に優れた芸術を」という理念から生まれたシリーズでした。
その理念に偽りはないでしょう、この絵本でも芸術性と子どもへの教育という要素が高い次元で実現されています。
子どもから大人まで、幅広い年代にお薦めできる、素晴らしい絵本ですし、日本語翻訳版はお求めやすい価格ですので是非オンラインストアでもご覧ください。
当店在庫はこちらです。
0コメント