「ぼくのだいじなあおいふね」ディック・ブルーナ

2月16日にうさぎのミッフィーちゃんで知られるオランダのデザイナー/絵本作家であるディック・ブルーナさんが亡くなられました。89歳でした。

当店でも紹介したことがありますが、そのシンプルで親しみやすいながらも洗練された絵は世界中で愛され、特に日本ではその人気も本国に次いでと言われるくらいでしたね。

「ブラックベア」に代表されるような洒脱で優れたデザイン性感じさせる作品から、「うさこちゃんシリーズ」のように本当に小さなお子様が楽しめる作品まで幅広い年齢層に愛されてきましたが、今日紹介します「ぼくのだいじなあおいふね」はまたちょっと違う絵本かもしれません。

この絵本は耳の不自由な男の子「ベン」の日常を描いたお話なんです。

付けている補聴器のこと、ベンが感じる楽しいことや悲しいこと、そしてベンの周りの家族や先生、お友だちがベントと接するときのことなどが描かれているのですね。

この絵本を全体を通して、少し自分とは違う人への理解、共感、そして子どもに対する愛情に溢れています。

あとがきのはじめで、ブルーナとお話を手掛けたピーター・ジョーンズがこう書いています。

お母さん、お父さんへ

この本は、耳の不自由な男の子ベンの日常生活を描いた絵本ですが、すべての子どもたちに読んで欲しいと願ってつくりました。障がいのあるなしに関わらず、子どもたちがお互いに理解し合い、共に生きていく助けになればいいと思います。

差別は未だになくなってはいません。それは障がいをもつ人々への、だけではなく、人種差別/移民差別、病気を持つ人々へのものなど様々です。

その根本にあるのは他者への無関心、不寛容でしょうか。

ブルーナのオランダでもウィルダースの自由党が躍進し、フランスでも国民戦線が支持される時代です。

ブルーナがこうした社会の流れをどう感じていたのかはわかりませんが、彼の絵本を読むすべての子どもたちの中に、自分とは少し違う人たちへの理解、寛容、そしてそれらをささえる愛情が、絵本を通して蒔かれ続け、いつまでもその心のなかに残り続けることを願ってやみません。

r.i.p


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