太田大八さんも作品によって作風がそれぞれ異なりますけれど、私は幼い頃に読んだ「びんぼうこびと」の印象が強く記憶に残っています。
曲彩色のペイズリーのような模様につつまれたあの絵本は、幼い目には何処か異様で、怖くて、だからかもしれませんがずっと心に残っていました。
こちらの絵本は奥田継夫さんと太田大八さんによる「三角の部屋」と言う本です。絵本というよりも、児童読み物でしょうか。
おじいさんが亡くなってから、おばあさんは独り言が増え、急激に老いてしまいました。家族からは何となく疎まれてきてしまうのですが、孫のエツ子だけはおばあさんにくっついています。
おじいさんの書斎だった三角の部屋。
エツ子はそこでおじいさんのものを、古いアルバム、パイプ、煙草の葉、そんなものを色々と見つけて、手に取り、おばあさんと、そしてもう死んでしまったおじいさんと、話をするのでした。
幼いころに体験する身近な「死」というものを穏やかな語り口で描いた優しい物語です。エツ子はその「死」を記憶や思い出として自然に受け入れていく様子が繊細に描かれています。
太田さんの絵はこの作品でも場面によって随分と違う印象を受けるのですが、表紙にも使われている三角の部屋の情景は、まるでボナールを思わせるかのような美しい光につつまれた絵なんです。
記憶の中で死がイメージと結びつくのならば、この絵本を読んだ子どもは、この太田さんの、茜色の光に溢れる部屋のイメージと結びついていくのではないでしょうか。
それは、とても幸福な思い出になるような気がしますね。
ひとりで読むのなら四年生くらいから、読み聞かせでしたら一年生くらいからでしょうか。
是非オンラインストアでも御覧ください。
当店在庫はこちらです。
「三角の部屋」奥田継夫 太田大八
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