とるにたらないおとこの話/新装版

昨年春にSUNNY BOY BOOKSより発売され、当店でも多くのお客様に販売させて頂いたタダジュンさんとさかたきよこさんの絵本「とるにたらないおとこの話」ですが、限定部数だったため昨年秋にはもう出版社在庫のない状態でした。こちらは買い逃していた方も多かったのではないでしょうか?

しかし、今月下旬、新装版としてこの絵本が再び発売になります!

表紙の色も変わり、初版と同様に愛蔵版(蔵書票の版画シート付/初版とは異なるデザイン!)と通常版の二種類の刊行になるとのことです。

まもなく当店にも入荷すると思うのですが、現在は予約の受付をしております。

以下に、以前この絵本を紹介させて頂いた際のテキストを記載させて頂きます。

沢山のご予約、お待ちしております。

20世紀後半アメリカ文学の空気感をまとった、静かに胸に響く絵本です。

「とるにたらないおとこの話」さかたきよこ/タダジュン

日の目を見ないひとりの芸術家と、その猫サヴィの、とるにたらない日常の日々。

何が起きるわけでもない。

好きな版画を彫り、猫との食事、旅立つ友人を見送り、似ているようで似ていない、日々の生活の中の少しの悲しみと、喜び。

自分がこの絵本を読んで一番最初に思い浮かべた作家はレイモンド・カーヴァーでした。

どことなくヒリヒリする肌感覚。そして日々の中に突然訪れる恩寵の予感。

カーヴァーの小説で自分が好きなのは、その小説の中にただの日常があることです。輝かしい青春や、燃えるような恋があるのではなく、この退屈な日常があること。

憂鬱な朝や、ただ風が気持ちよく感じる日。

そうした日々の組み合わせの中で、奇跡のように訪れるこの日常から抜け出せる(かのように思える)不思議な感覚。

そしてそれはまた短い時間で過ぎ去っていく。

「とるにたらないおとこの話」は、とるにたらないわたしの話なのだと、誰もが感じるのではないでしょうか。

自らのとるにたらなさを、鼻で笑って、それでも愛さずにはいられない、なんでもない、特別なただひとりである、すべての人のための絵本です。

ところでカーヴァーとは別に、もうひとりの作家を思い出してもいました。

それはサリンジャーです。

サリンジャーの「フラニーとゾーイ」の中で、その終盤で語られる「ふとっちょのおばさま」の話を、この「とるにたらないおとこの話」を読みながら思い出していました。

どれも、この日常を、ほんの少しだけ力強いものにするための、人の心の底に備えておくべきお話だと思います。


予約注文はこちらからどうぞ。

とるにたらないおとこの話(新装愛蔵版)」タダジュン さかたきよこ

とるにたらないおとこの話(新装版)」タダジュン さかたきよこ


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