「HIDE AND SEEK FOG」Roger Duvoisin

ロジャー・デュボアザンと言えば、「がちょうのペチューニア」や「かばのベロニカ」、また奥さんとの共作である「ごきげんならいおん」シリーズを思い浮かべる方も多いかと思います。

スイスに生まれ、その後アメリカに移り住み多くの作品を生み出したデュボアザンは、日本でもたくさんの絵本が邦訳され愛され続けてきました。

今年の6月にも「みみずくのナイトとプードルのデイ」が邦訳出版されたばかりですが、その作品も含め、鮮やかな色彩でデザイン性の高い、動物たちの絵の印象があるのではないでしょうか?

本日紹介する「HIDE AND SEEK FOG」は、そんなデュボアザンとはまた違った印象を与えてくれるかもしれません。HIDE AND SEEKとは、かくれんぼのこと。ある海沿いの町で濃霧が続き、海辺も町中も霧で覆われ、漁へ出ることもボートレースも砂浜で遊ぶこともできず、町を歩けば人とぶつかってしまいます。唯一子どもたちだけはこの珍しい出来事に大はしゃぎ。岩場でかくれんぼをして遊びます。そして、それぞれが霧の日々を思い思いに過ごし、3日目の午後、突然霧が晴れ、金色の光が差し込みます。皆はまたもとどおりの生活を始めるのです。言ってしまえば、霧がかかりやがて晴れるという、ただそれだけのストーリーなのですが、それだけにデュボアザンの絵の持つ表情、表現力が際立ち、霧に包まれた淡く溶けるような景色と、霧が晴れた後の活気あふれる町の風景とが見事なコントラストとなって見る者の心を刺激します。これまでの鮮やかで愛らしい動物たちの絵本では見られなかった、デュボアザンの素朴で穏やかで柔らかい表情が感じられる絵本です。

未邦訳作品の洋書ですので、文章は英語ですが、とても優しい英文です。また、絵がお話を引っ張っていってくれるので、あまり正確な読解も必要ないように思います。是非手に取って見ていただきたい一冊です。

HIDE AND SEEK FOG」Roger Duvoisin

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