「I'm nobody who are you?」西田陽子 エミリー・ディッキンソン

現在当店で開催中の西田陽子さんの銅版画展「Memory like melody」の中で、一番大きな作品がこちらの「I'm nobody who are you?」です。


今回の個展は、当初西田さんから何かテーマとなるようなものが無いかとご相談を受け、そこで自分が幾つかご提案をし、その中から西田さんに、アメリカの詩人エミリー・ディキンソンを選んで頂いたのでした。


そのディキンソンの詩作品から西田さんがインスパイアを受け、制作した幾つもの作品の中でも、個人的にも特に目を瞠る作品がこの「I'm nobody who are you?」です。


女性の横顔。

花を指でつまんで、風が吹いているようなので、外にいるのでしょうか?

物思いに耽るような、遠くを見つめるような瞳。

何かボタニカルな装飾模様に見えるドレス。

遠くから見ると、これも何かの模様に見えていたそのドレスの袖と女性の髪は、近くで見れば文字が刻まれていることに気が付きます。

びっしりと刻まれたこの文字は、ディキンソンの詩なのです…。


西田さんのこの作品のタイトルにもなっているディキンソンの詩は、以下のような詩です。


I'm Nobody!Who are you?

Are you — Nobody — Too?

Then there's a pair of us?

Don't tell!they'd advertise — you know!

How dreary — to be — Somebody!

How public — like a Frog —

To tell one's name — the livelong June —

To an admiring Bog!


エミリー・ディキンソンは生前、わずか10篇の詩を発表しただけで(その10篇でさえ、自ら進んで発表したものではなかったのですが)、無名のまま『何者か』にはならずに、その生涯を終えました。

ある時期からは、ほとんど家から出ることもなく、生涯独身で、いつも白いドレスを着ていたそうです。


わたしは誰でもない…、あなたは誰?


今ではアメリカを代表する詩人として高く評価されているエミリー・ディキンソンは、生前は何者でもないまま、何者かにはならぬよう、息を潜め彼女の内なる詩を書きとめて暮らしていました。


ディキンソンの詩にいつも漂う静けさと、そして何処かしら朗らかな感触は、この西田さんの作品にも、たゆたうように、それでいて強く漂っているように感じられます。


西田陽子さんの個展は来週月曜日の11日までです。

お店でも、オンラインストアでも、どうぞご覧下さいませ。

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